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脳血管障害に対する直達術

脳血管障害(脳卒中・中気・中風ともいいます)は、脳に血液を送る血管の異常により引き起こされる病気で、血管が破れることによる出血性脳血管障害と、血管が細くなるか詰まることによる虚血性脳血管障害に分けられます。

出血性脳血管障害の主なものとしては、脳内の細い血管が破れて生じる脳出血と、脳の表面の血管の動脈瘤が破れて生じるくも膜下出血に分けられます。

虚血性脳血管障害は、心臓内に生じた血栓が血流に乗って脳の動脈まで運ばれてそこで詰まってしまう心原性脳塞栓症、太い動脈の動脈硬化によって生じるアテローム血栓性脳梗塞、脳出血と同様の細い動脈が詰まることにより生じるラクナ梗塞が主なものです。

Time is brain.という言葉があります。日本語にすると「時は脳なり」ですが、ひとたび脳卒中が発生するとその後急速な脳障害が生じるため、緊急の診断および治療が必要であるという事を示しています。長崎大学病院では2008年より脳卒中ケアユニット(SCU)が稼働し、脳神経内科医師・脳神経外科医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・病棟薬剤師などの多職種が関わる脳卒中チーム医療による24時間の救急医療体制をとっており、緊急治療の必要な脳卒中の患者さんに対して高度な医療を提供しています。

脳神経外科では、脳卒中予防や再発予防を目的とする外科的治療を行っています。主な対象疾患には脳動脈瘤・頚部頸動脈や頭蓋内動脈の狭窄もしくは閉塞による虚血性脳血管障害・もやもや病・脳動静脈奇形などがあります。脳動脈瘤に対しては、開頭クリッピング術もしくは血管内治療のいずれかを行います。また、それら単独の方法では治療困難な脳動脈瘤に対しても、両者を組み合わせたハイブリッド治療を積極的に行っています。また、バイパス術を併用する複合的治療も行っています。頚部頸動脈狭窄症に対しては頸動脈血栓内膜剥離術を行っておりますが、呼吸器疾患をお持ちの方など、危険性の高い患者さんには血管内治療による頸動脈ステント留置術をお勧めすることもあります。動脈閉塞や狭窄により著しい脳血流低下を認める場合には、再発予防の目的で脳血行再建術(バイパス術)を行います。もやもや病は小児期には脳虚血で、成人期には脳出血で発症することが多く、再発予防にはバイパス術が有効です。当院では、小児においての難易度が高いとされる直接的血行再建術を組み合わせた手術を行っており、良好な治療成績を上げております。脳動静脈奇形に対しては病変の部位や大きさ・出血の既往等で異なりますが、開頭摘出術・血管内治療・定位放射線照射を単独もしくは組み合わせての複合的治療を行っています。

以上のように、当科での脳血管障害に対する治療は、高い治療効果と低い侵襲度(=患者さんに与える身体的・精神的負担)のバランスを充分に考慮しながら、個々の患者さんにおいて常に最良の手術を提供できるよう心がけています。

文責:出雲 剛

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