診察・研究活動Consultation and Research Activities

小児疾患

当科では、出生時に「水頭症」や、「二分脊椎」といった先天奇形を伴ったお子さんの病状経過を、小児科の先生方からの紹介に応じ診察しております。

水頭症

脳の内側や表面を流れる「脳脊髄液」の流れが異常になり、頭蓋内にたまって脳を圧迫する病気です。意識状態や呼吸に障害が出ることが多く、たまった脳脊髄液を外に逃がして脳への圧迫を取る手術が必要になります。

手術は一般に「髄液短絡手術(シャント手術)」と呼ばれ、シリコン製のカテーテルを頭部から腹部に通して脳脊髄液の流れをつくってやるものです(この方法は「脳室腹腔シャント術」と呼ばれていますが、その他カテーテルを通す場所に応じて、「脳室心房シャント術」「腰部くも膜下腔腹腔シャント術」など手術の名称が変わります)。一旦体内に入ったカテーテルはそのままですが、身体の成長に応じてカテーテルを延長する手術が必要になったり、カテーテルの機能が合わずに思い通りの髄液短絡が得られずにカテーテル交換が必要になったりすることがあります。また、水頭症に合併する他の奇形に関しても脳神経外科的な治療が必要になる場合があります。

二分脊椎

母胎内で胎児の器官が形成されるとき、なんらかの原因で脊椎の後半分の形成がストップしてしまい、脊髄を覆うことが出来ずに露出してしまう状態です。逆に露出が不完全で表面が皮膚で覆われている場合は、柔らかい「こぶ」の様な形で存在します。この疾患は特に腰椎・仙椎に多く、両足の麻痺や膀胱直腸障害(尿が勢いよく出ない、お尻の穴が締まらず、便が垂れ流しのような状態になる)を呈することがあります。

特に、脊髄が露出する「脊髄髄膜瘤」の状態では、本来無菌的であるべき神経組織が外気に触れてしまうために感染を起こしやすく、髄膜炎や脳炎といった将来に重大な影響を与える合併症が予想されます。それを防ぐために、露出した病巣部を閉鎖する手術を緊急で行います。

その後、身体の成長に伴い、創部に脊髄が引っかかって引っ張られ、痛みやしびれ・足の変形・排尿排便障害などの症状を呈することがあります(脊髄係留症候群)。症状に応じて泌尿器科や整形外科の先生方の診察が更に必要になります。

[付記]小児の頭部打撲

お子さんが転んだり、落ちたりして頭を打ったとき、「今は大丈夫みたいだけど、あとで急に意識がなくなったり、呼吸が止まったり、成長に障害が出たりしたらどうしよう?」と、心配になったことはありませんか?実際、外来にはそのような心配をしてお子さんを連れて来られる方が非常に多くみられます。頭部打撲の際に問題になるのは脳挫傷や頭蓋内出血による脳の圧迫が主で、これらは実際にあとから遅れて症状を引き起こすことがあります。しかし「あとから」といっても数時間単位の話であり、通常は頭を打ってから6時間程度様子をみて、特に変化がなければ、その後で新しく出血したり、症状が出たりすることはありません。しかし、中には「何回も吐いて、グッタリして元気がない」という症状がみられる場合があるのですが、これは脳の異常ではなく、頭を打ったストレスに身体が上手く対応出来ずに起こった反応です。通常は適切な水分補給で改善しますが、吐く回数が多くて口からの補給が困難な場合は、点滴で補う必要があります。経験上、実際にあとから重大な症状がでたお子さんはいませんので心配はいらないと思いますが、もし自分のお子さんが頭を打ってしまい、心配になった時は、どうぞ遠慮なくご相談下さい。

(文責:角田 圭司)