診察・研究活動Consultation and Research Activities
血液脳関門
血液脳関門(BBB; blood-brain barrier)は脳毛細血管内皮細胞だけでなく、ペリサイト、アストロサイトを含めた3種類の細胞より構成されており、これらの細胞間のクロストークが非常に重要です。神経細胞とBBB構成細胞は機能的なユニットを形成していることからneurovascular unitと呼ばれ、生理的、病態的意義の解明が進んでいます。さらに脳虚血時や炎症下においてはミクログリアの関与も注目されています。これらの細胞間のクロストークの破綻は中枢神経疾患の発症と進展に密接に関係しているため、神経細胞保護に加えてBBBを制御することは中枢神経疾患治療の重要なターゲットと考えています。
我々は長崎大学薬理学教室で開発されたin vitro BBB modelを使用し、脳虚血や高血糖など日常臨床で遭遇する病態モデルを作製し、さまざまな薬剤がBBBに与える影響を検討するとともにそのメカニズムの解明を行ってきました。 また、BBB研究を発展させ、転移性脳腫瘍における癌細胞の浸潤・転移のメカニズムの解明、幹細胞のBBB通過機構の解明などにも着手しています。
長崎大学脳神経外科は薬理学教室と共同でBBBに関する研究を長年に渡り行っており、数多くの論文を発表しております。また、大学発ベンチャー企業であるファーマコセル社とも連携し、当科のBBB研究をサポートしていただいております。
これまで数多くの医局員が血液脳関門領域での研究成果を認められ、海外留学し、研究を発展させています。留学先も多岐に渡っており、海外の研究施設と共同研究できる体制も整ってきました。
これからもBBB保護という新しい視点から、脳卒中、脳腫瘍、てんかんなど脳神経外科領域全般に貢献できる研究を展開していきます。
(文責:諸藤 陽一)